空間現代 Tuuka (蓮沼執太 remix feat.古川日出男)
kukangendai / tsuuka (Shuta Hasunuma remix [feat. Hideo Furukawa])
2013.8.25 on sale ※digital only※
空間現代「通過」のリミックスをしました。小説家の古川日出男さんに未発表のテキストを朗読してもらい、HEADZの事務所で一発録りを試みました。エンジニアは僕自身でやりました。マスタリングは益子樹さん。
この機会に、リミックスの作り方を記してみます。
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『Tuukaリミックスの作り方』
空間現代の音素材をバラバラにもらいました。録り音自体はダイナミクスが非常に無くて、ニュートラルで平坦な音質でした。まずは3分くらいのデモトラックを作りました。その時点で、もうこのリミックス楽曲の骨組みは完成しました。そのトラックに日本語の言葉を乗せたいと感じていて、ラッパーのようにビートと噛み合うようにして、言葉と音楽がクロスするような形ではなく、言葉も音楽も別々のグルーヴを保ちながら共存し合う強い関係が必要だろうと思い、すぐに古川さんにメールをしました。翌日には「是非!」とのお返事があり、僕はコンポジションをさらに複雑にし、きめ細かくしていきました。
その後、僕自身もナイロビへレジデンスに行っていたので、朗読の録音は帰国後に行う事にしました。すこし時間が空いたところで、古川さんとのレコーディング。一発録りを一瞬で行いました。打合せも無く、意見交換も無い。この辺り、古川さんの音楽との距離感や楽しみ方がビシビシ伝わってきて、こちらも気分が高まり、良い緊張感が体にはしります。一瞬と書きましたが、本当は9分近いレコーディング時間だったのに、録音していた時間感覚は一瞬なんです。それはとても自然な長さだな、と思いました。
スタジオに戻り、朗読には不必要なエディットはせず、出来るだけニュートラルな状態で、空間現代のリミックスの音にちょこんと乗せるように、朗読を配置しました。この配置とは、空間現代と古川日出男にこの場所で大いに戦ってもらうような心持ちで音をProTools上に置いた、という意味合いです。勝手にやりやってもらった方が良い試合をしそうだという直感です。
そして音源が完成し、マスタリングは『CC OO』も手がけてくれた益子樹さんの元に持っていきました。益子さんとは何度も制作を共にしているので、僕の趣向も理解してくれていて、楽曲を想像以上のレヴェルまで持ち上げてくれました。ダイナミックの洪水のようなマスタリングでした。素晴らしいマッチングだと、改めて確信しました。
この完成したリミックス。配信リリースということで、どこまで皆さんの元へ届いているのか、僕には想像もつきませんが、ここまで正直で強い楽曲に携わったのは久しぶりです。この気持ちをここに記しておきます。
2013年9月1日 蓮沼執太
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