蓮沼執太 | Shuta Hasunuma

JUDAS, CHRIST WITH SOY ~太宰治「駈込み訴え」より~

Date

2017.01.04

Remarks

Music for Dance Piece

太宰治の短編「駈込み訴え」を題材に、作品に描かれるユダとキリストの複雑な関係性が変幻自在なムーブメントと音楽で織りなされる世界。性別や国籍、文化も違う森山未來とエラ・ホチルドの言語感覚の往還が予期しない解釈へと導いていく――。

俳優・ダンサーの森山未來が、文化交流使としてイスラエルに滞在中、気鋭の振付家、ダンサー、エラ・ホチルドと太宰治の短編「駈込み訴え」を下敷きに共作し、2014年にテルアビブで世界初演。2015年に愛媛県・内子座で公演、<Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015>の特別プログラムとして横浜で公演。 再演が待ち望まれていた話題作を、2017年1月横浜赤レンガ倉庫1号館で上演。

日時:2017年1月4日(水)19:30開演 / 1月5日(木)15:00開演 / 1月6日(金)15:00開演
※各回とも開場は開演の30分前
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール|神奈川県横浜市中区新港1-1-1
料金:○一般 前売:4,000円 / 当日:4,500円○学生/高校生以下 前売:3,000円(前売券のみ・数量限定)
企画、共同制作・出演:森山未來
演出、美術、振付・出演:エラ・ホチルド
音楽、演奏:蓮沼執太
主催:横浜赤レンガ倉庫1号館 [公益財団法人横浜市芸術文化振興財団]
提携:株式会社ワコールアートセンター
後援:横浜市文化観光局/横浜アーツフェスティバル実行委員会、イスラエル大使館
助成:Mifal HaPayis
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当日パンフレットより抜粋。僕の寄稿文です。

本日はご来場ありがとうございます。
僕はステージ上手(右側)に位置したブースから音楽を奏でています。同時に目には見えない気配を音で作っています。

今公演の音楽は、前回の本牧公演の時に作曲、録音して作り上げた楽曲がベースになっています。
すでに上演のための音楽が作り終えているのであれば、その録音された音楽を再生するだけでも公演は成立するはずです。でも、その上で僕が生演奏で音楽を上演していく理由はいくつかあげられます。まずは舞台上で起こる変化に瞬間的に追いつくには、僕自身が現場で音を出していくしかありません。レコードされた音では無く、生演奏で気配をつくり出すことで、舞台環境を変化させていく必要があります。また僕がいくつかの楽器を演奏するその動き自体が身体表現ともいえます。演奏する身体の動き自体も空間的な気配をつくり出す一要素になります。このように舞台や音楽をめぐる関係は様々な視点を持っているものですが、今公演は繊細で複雑なレヴェルで絡み合っています。

目の前にある身体が動くことというのは、音楽家にとってぬみるとそこには必ず「時間」が生まれます。静止した状態から動的に変化したその瞬間から時間が生まれます。その生まれた時間をより細かい時間間隔で捉えていこうとすることが仕事です。それは時間を顕微鏡で覗くようにしてミクロに捉える作業とも言えます。この微細な行為によって音の粒や音楽になる前段階の要素を探していきます。
例えば、レコーディングされた音を時間軸上で引き伸ばし1秒という時間を更に細かく1/1000ぐらいにミクロ化をすることでその微細な音時間を編集していきます。動的に変化していく現象を繊細に分析し処理をして瞬間的に音として出力していく。その連鎖の集積が音楽になります。

森山未來、Ella Rothschildとのクリエーションは常に刺激的です。作品の題材はコミュニケーションの差異を伴うものですが、アーティストとしての2人の関係はとても美しいものです。このような現代的な制作に関われることに感謝します。

蓮沼執太
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