STATEMENT
「 ~ ing」によせて
音は生まれたら消えていきます。音楽と呼ばれるすべての行為は、この消えていく音を聴き出そうとする、人間の欲求なのかもしれません。音楽は僕たちの生活の中から生まれていて、個人から出発して、個人へ戻ってきます。
この地球に生まれて来た人間には、どのような社会、共同体であろうと、さまざまな関係性が無数に存在しています。それは人間同士だけの関係ではなく、非人間との関係性も同様です。人間と非人間の両方の活動を認めていくこと、それぞれの繋がりを意識することは、僕らとの共生の地平を新たに切り開くことを可能にするかもしれません。日常的な考えを打ち倒してしまうような気候変動、地震活動、放射能をはじめとする生態的な諸存在は、僕たちにとって時間的、空間的にも計り知れないものに感じます。さて、この展覧会『 ~ ing』に存在する時間と空間はあなたのものです。その都度に変化していく状況は、言葉で形容できない「モヤっ」としたものでしょう。たくさんの「モヤっ」を発見していくきっかけがありますように。
蓮沼執太
INFORMATION
開催概要
- 会期
- 2018年4月6日 (金) 〜6月3日 (日)
- 会場
- 資生堂ギャラリー
- 主催
- 株式会社 資生堂
- 協力
- 株式会社中川ケミカル、株式会社ヤマハミュージックマニュファクチュアリング、WHITELIGHT
- 企画
- 資生堂 企業文化部
- 展覧会担当
- 豊田佳子
- コーディネート
- 柴田とし
- 制作スタッフ
- 前原佑柾、西岡央樹
- 写真
-
イベント / 後藤武浩
トークイベント / 永田綾子
インスタレーションビュー / 加藤健
- 展覧会カタログ
-
株式会社 資生堂より「蓮沼執太 ~ ing」展カタログが出版されました。
資生堂ギャラリーにてご購入できます。
資生堂ギャラリーは、音楽家、アーティストとして国内外で活躍する蓮沼執太の個展を開催します。
蓮沼は、多くの社会問題を抱える現代を大きな変革の時期ととらえ、人間と人間以外のもの(たとえば自然、テクノロジーなど)との関係性が問われていると感じています。そのためにまずは過去を見直すこと 自身の10年余りの音楽活動や、これまで影響を受けてきた他者の作品を再検証する必要があると考えます。過去と現在の作品を相対化させることで、過去に新たな視点を見出す可能性、また、これからの作品に新たな視点を生む可能性があることも示唆しています。
今回は、過去と現在のコンセプトとの差や共通点を見つけ出し変化の様子をたどるといったプロセスを経て、蓮沼のクリエーションの柱となるフィールドワーク、協働、現象といった要素を抽出し制作した映像、サウンド、立体などの作品を展示します。展覧会では人間と人間、人間と人間以外のものとの新たな関係性と共存について考察すると同時に、展示作品を構成(compose=作曲)し、ひとつの調和を作り出します。そして、空間に存在するすべての音をまとめたひとつの音楽にすることを試みます。展覧会のタイトル「 ~ ing」は、事物(人間)を繋ぐ関係性の象徴としての「~」と、進行形・Thing・Beingという意味での「ing」を組み合わせています。
資生堂は、「美しい生活文化の創造」を企業使命とし1919年に開設した資生堂ギャラリーの活動において、新たな価値の発見と創造を目指してきました。蓮沼は、人々の生活を豊かにしてきた音楽を通して新たな社会への視点を見つけ出そうとしています。彼が資生堂ギャラリーに創る、世代、性別、国籍などを問わず様々な人たちが交わる状況や環境の中で、音楽について再認識するきっかけとなりましたら幸いです。
EVENT
-
オープニングパフォーマンス
- 日時
- 2018年4月6日(金)
- 会場
- 資生堂ギャラリー
-
対談
蓮沼執太×松井みどり(美術評論家)- 内容
- 現代美術、現代音楽と蓮沼執太の活動について
- 日時
- 5月9日(水)18:00~20:00
-
公開リハーサル
蓮沼執太フルフィル- 日時
- 2018年5月27日(日) 15:00-17:00 (開場14:30)
- 会場
- 花椿ホール
- 出演
- 蓮沼執太、石塚周太、イトケン、大谷能生、葛西敏彦、木下美紗都、K-Ta、小林うてな、ゴンドウトモヒコ、斎藤亮輔、Jimanica、千葉広樹、手島絵里子、宮地夏海、三浦千明、池田恭子、石川賢、内田翼、河野絵里花、菅間一徳、たきぐちがめ、田中堅大、松浦知也、宮坂遼太郎、横山千晶
- 制作
- 清宮陵一
- 舞台監督
- 佐藤恵
- 制作協力
- 渡辺敬之
現在の16人編成の「蓮沼フィル」に10人の新メンバーを加えた「蓮沼執太フルフィル」の公開リハーサルを行います。8月に開催された「蓮沼フルフィル」によるラージ・スケール・シンフォニー公演に向けての初めてのリハーサルです。
-
パフォーマンス
蓮沼執太&ユザーン- 日時
- 6月1日(金)19:00~20:00
- 会場
- 花椿ホール
- 出演
- 蓮沼執太、U-zhaan
INSTALLATION VIEW
-
Walking Score in Ginza
2018
映像、マイク
39分10秒これまで青山、北京、NYで行ったWalking Scoreの最新作を銀座で制作した。Walking Score は、マイクを転がして展覧会場の周辺を歩き、音を採集するフィールドワーク・フィールドレコーディングの作品。時間によって表情を変える銀座では、昼と夜に同じマイクを使って行った。階段の下に展示しているマイクはこのときに使用したもの。マイクを転がして歩くことで、街や人と関わり、マイクは道路の打楽器のような音を拾う。銀座で地下鉄の階段を上り下りしたように、資生堂ギャラリーの階段に展示した。街なかで行ったパフォーマンス的映像と音の作品。
-
Ginza Vibration
2018
映像、環境音銀座の外の振動をダイレクトにギャラリーの会場に伝えることを試みた。展覧会会期中並木通りにある資生堂銀座ビルの屋上ガーデン「資生の庭」(非公開)にマイクとカメラを設置した。屋上の映像はギャラリーの床に投影され、環境音は天井から吊るした4つのスピーカーから流した。フィールドワークとして、銀座の日々の変化をリアルタイムで地下のギャラリー空間に届けた作品です。
-
Thing 〜 Being
2018
楽器金属材、ミラーシート、アルミ板
協力:株式会社中川ケミカル、株式会社ヤマハミュージックマニュファクチュアリング楽器やレコードなど音楽的なオブジェクトを解体し、再構築するシリーズRe-modelを、今回資生堂ギャラリーの空間に合わせて制作した。床に広がるのは、楽器の製造過程で出た金属材。四方の壁は、ミラーシートで覆い、無限の空間を表現した。来場者の足と金属部品が触れることで音が出る。壁面の映り込みで、作品に参加している自分をみつけ、楽器材であるモノとの関係性、また、会場にいる他者との関係性を視覚的、聴覚的に認識することができる「人の存在が音化する」作品。
-
Change
2014~2018
映像(メール15通)メールを用いたプロジェクト。蓮沼が採取した環境音と、レコーディングした位置情報からGoogleでイメージ検索し選んだ画像を添付して、数名に不定期に同時送信している。フィールドレコーディングした時間に合わせて液晶の画像が変わっていく。手紙と違い、メールではテキスト、画像、音も同時に多数に送ることができるという、テクノロジーや通信の変化に言及した作品でもあり、日記的、反復的性質も併せ持っている。メールには、画像と音以外、日付と場所のみ情報として記されていて、時間、空間、現実、フィクションといった複数の要素が結び付けられている。
-
We are Cardboard Boxes
2018
ミクストメディア箱から聞こえてくるのは、蓮沼が段ボールを使って演奏した音楽。パーカッション的な音は空間全体の音のなかでスパイス的な役割を果たした。荷物のように置かれた段ボールから音楽が聞こえてくるという意外性は、人間同士のコミュニケーションを生み、モノについて考えるきっかけを与えてくれるだろう。
-
Tree with Background Music
2018
木、スピーカー
協力:ホワイトライトスピーカーから流れる音楽を用いて、木の葉を揺らす現象を起こすことを試みた。音楽を可視化する象徴的な作品。
-
Music for ~ ing
2018
音楽
17分15秒花椿通り側の資生堂ギャラリーへの入り口近くにある小ウインドウの中に振動スピーカーを設置してガラスを共鳴させ、展示作品に使った音の素材を束ねて作った曲を通りに向けて流した。