土佐有明による批評(Disc2)
「実験は嫌だけど、発見はいいじゃない」――これは以前ASA-CHANG&巡礼のインタビューで打楽器奏者のASA-CHANGが筆者に語った言葉だが、蓮沼執太の音楽を聴くといつもこの発言を思い出してしまう。上記の発言は実験音楽が好きになれない、というASA-CHANGの嗜好を受けてのものだが、蓮沼執太の音楽も数多くの発見、いや、発明に満ち溢れている。音楽にノーベル発明賞があったら、まっさきに蓮沼に授けるべきだ、とすら思う。
このDISC2も、口笛や鳥の声などの具体音を使ってはいるが、頭でっかちな実験音楽という印象はまるでない。それどころか、どの音もコロコロよく弾み、チャーミングで愛らしいのだ。例えばかつてのマウス・オン・マーズがそうであったように、音色ひとつひとつに人懐っこく笑いかけてくるようなたたずまいがある、と言えばいいか。聴いていて思わず顔がほころんでしまう、というのは筆者だけではあるまい。
また、このDISC2には無印良品の様々なプロジェクトのために作られた音源が多数収録されているが、“無印”だからといって無味乾燥な風情はまるでない。むしろ、カラフルでポップでキュートで、モノクロームの風景を極彩色で彩ってしまうような説得力と微笑ましさがある。無印どころか有印である蓮沼の音楽が、“MUJI”の店舗に刻印されている。そう言っていいだろう。
嚆矢は、子ども達と廃材で楽器を作るワークショップを行った際の音源「ZOU-NO-HANA TERRACE SONG」。邪念やけれん味がまるでない、音そのものと戯れることをひたすら純粋に楽しんでいるような感触が、この曲にはある。蓮沼とのワークショップを通じて獲得された無数の発見、いや、発見と意識される以前のプリミティヴな衝動が、この曲には息づいているのだ。時間を巻き戻せるならば、このワークショップに参加してひとつの触媒になってみたかった、そう思わせる力のある曲だ。
土佐有明
土佐 有明(とさ ありあけ)
ライター。『ミュージック・マガジン』、『レコード・コレクターズ』、『CDジャーナル』、『TV Bros』、『JaZZ JAPAN』、『週刊読書人』などで音楽評、演劇評、書評を執筆中。
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Disc2 収録曲一覧
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Title Commission Type Year
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14CHANCE Self Others 2018
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15Birdcalls KIRIN Promotion 2016
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16Bakemono AOMORI MUSEUM OF ART CM 2015
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17Daily Life - Self 2015
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18Friends Zone GYAO! Promotion 2017
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19Cool Storage MUJI Promotion 2015
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20Stroke -alternative MUJI Promotion 2012
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21Smart Theory MUJI Promotion 2016
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22Simply Fade MUJI Promotion 2017
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23Mobile Stories MUJI Promotion 2016
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24GGG with U-zhaan MUJI Promotion 2015
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25RT -variation MUJI Promotion 2016
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26It's six of one and half a dozen of the other MUJI Promotion 2017
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27Walking on our promenade MUJI Promotion 2017
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28Folk Songs MUJI Promotion 2015
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29Drops - Self 2015
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30Handmade musical instrument Workshop in Osaki, Tokyo - Workshop 2013
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31Raccoon Demo たぬきのまち音楽祭 - 2015
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32ZOU-NO-HANA TERRACE SONG 象の鼻テラス Workshop 2012
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33Ride 株式会社TESS CM 2016
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34Many Stripes STRIPE INTERNATIONAL INC. Movie 2016
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35No Gravity - - 2015
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36Beauty and Y -instrumental H BEAUTY&YOUTH Movie 2016
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37Furniture ナフコTWO-ONE STYLE CM 2017
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38Music for BROWNSALT BROWNSALT Web 2016
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39351E60TH454 - Self 2018